3分でわかる『失敗の本質』経営者・リーダー必携の組織論の名著のまとめ

『失敗の本質』とは、1984年に出版された本で、出版から30年以上経った現在でもリーダーや経営者の愛読書として知られています。なぜ現在でも多くの知識人の心をつかんでいるのでしょうか。
ここでは、忙しいビジネスパーソンのために、3分でわかる『失敗の本質』の要約と、なぜ今『失敗の本質』を読むべきなのかをまとめてご紹介します。

失敗の本質とは

失敗の本質とは
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『失敗の本質』(『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』)とは、1984年に歴史学や経営学などの研究者6人の共著によって執筆された本です。第二次世界大戦の日本軍の失敗を組織の面から分析した名著で、サントリーホールディングスの新浪剛史氏や東京都知事の小池百合子氏など各界のリーダーの愛読書として知られています。

初版発行から35年経った現在でも多くの愛読者がおり、鈴木博毅氏の『「超」入門 失敗の本質 日本軍と現代日本に共通する23の組織的ジレンマ』や野中郁次郎氏の『失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇』など、さまざまな関連書籍が出版されています。

本書は、第二次世界大戦における日本軍の失敗を組織の失敗として捉え、その教訓を生かすことを目的としています。第1章で6つの作戦から日本軍の失敗の要因を抽出し、第2章でその特徴を分析、第3章でその要因を考察するという構成になっています。

内容は学術的で、かなり読み応えのあるものになっています。第1章で各作戦についてかなり詳細に分析されているため、結論にたどり着くまでが長く、途中で挫折してしまう人も少なくありません。
しかし、この本で得られる知見は、企業の経営や組織の運営に大きく役立ちます。この記事では、この「失敗の本質」の要点をまとめています。これから読む方も、一度挫折してしまった方も、以下のまとめで一度予習をしたうえで読んでみると、『失敗の本質』が読みやすくなるかもしれません。

失敗の本質の要点

失敗の本質の要点
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本書の主張は簡潔に次のように言うことができます。
一つは、日本軍の失敗の要因は組織が適応能力を失ってしまった点にあるということ、そしてもう一つは、その日本的組織の特徴は現代にも受け継がれている、ということです。

日本軍の最大の失敗の本質は、特定の戦略原型に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず自己革新能力を失ってしまった、ということであった。

引用:『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(著:戸部良一ほか)

本書では、適応能力を失った日本軍の組織的特徴と、適応能力を失うに至った要因が分析されています。ここではそのエッセンスを抽出し、わかりやすく紹介します。

強力なパラダイムが存在していた

日本軍の失敗の要因の1つに挙げられるのが、戦略オプションの少なさです。そしてその要因には、強力な「パラダイム」の存在がありました。

日本軍には、陸軍に「白兵銃剣主義」海軍に「艦隊決戦主義」という強力で一貫した戦略原型(パラダイム)が存在していました。それらの主義は明治初期の西南戦争や日清戦争での勝利、日露戦争における日本海海戦の大勝利により体系づけられたものでした。

これらは当時すでに30年以上も前の戦略、つまり時代にそぐわないものであったにも関わらず、日本軍はこれを信じ続け、この戦略に基づいて戦術を展開したのでした。日本軍は、この戦略原型に徹底的に適応し、行動様式を身に付けました。そのため、戦略が進化せずバリエーションに乏しく、変化した状況に対応しきれずに敗北してしまったのです。

このようなパラダイムが支配し続けた要因は、日本軍の組織的特徴にありました。年功序列型であった日本軍の組織では、リーダーの成功体験が蓄積・伝承されやすかったのです。リーダーの成功体験、すなわち日露戦争以前の戦略原型が至上のものとして継承され、強化されていきました。
さらに、そのような継承を可能にしたのは、暗記力を中心とした教育体系でした。そのようなシステムで育てられた組織は、決まったシナリオで展開していく場合には強いのですが、不測の事態には十分に機能しませんでした。

以上のように、日本軍は、過去の戦略に徹底的に適応してしまったために適応能力を失い、変化に対応することができなかったのです。

人間関係を重視しすぎた

日本軍の組織的特徴は、情緒的な結びつきを重視したものでした。日本軍は官僚的組織を採用していたにもかかわらず、官僚制的な階層による意思決定ではなく、根回しやすり合わせによる意思決定がおこなわれていました。
目標や手段の合理的な決定よりも人間関係への配慮が重視され、作戦展開の意思決定を大きく遅らせてしまったのです。その結果、作戦展開の速い米軍にことごとく敗北していきました。

また、人間関係の過度な重視は学習機会の損失にもつながりました。作戦の惨敗後、通常おこなわれるはずの作戦研究会も、士気の低下や指揮官の自信喪失を恐れたために開かれませんでした。情緒を重んじるあまり、失敗から学び戦略を改善する機会が失われたのです。

以上のように、日本軍は人間関係を重んじるあまり、合理的な判断をする力や、学習する姿勢に欠けてしまっていたのです。

連携不足だった

日本軍は陸軍と海軍の組織を統合する統合的な参謀本部を持っていませんでした。陸軍はソ連、海軍は米国と、ばらばらの仮想敵国を持ち、「白兵銃剣主義」と「艦隊決戦主義」という志向性の異なる戦略を持っていました。本来、それらを同じ目標のもとに統合させ、機能させていくことが必要なのですが、最後までその差が埋まることはありませんでした。

また、組織内で自由に議論するということがなかったため、情報が個人や小さなネットワークに留まり、全体に共有されることがありませんでした。そのため、同じような失敗を繰り返して敗北するという事態が起こっていたのです。

以上のように日本軍は、組織全体で同じ目標を持つことなくばらばらの目標や戦略を持ち、閉鎖的な組織であったために、情報共有がなされずに失敗してしまったのです。

なぜいま『失敗の本質』を読み直すのか

なぜいま『失敗の本質』を読み直すのか
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なぜ、『失敗の本質』は今でもなお読み返されているのでしょうか。それは、以上で紹介した日本の組織的特徴が、多少の変化はありつつも、今でもなお受け継がれているからです。
本書の第3章の最後では、日本の企業経営が日本軍の戦略や組織特性を受け継いでいることが指摘されています。

意識すると否とにかかわらず、日本軍の戦略発想と組織的特質の相当部分は戦後の企業経営に引き継がれているのである。

引用:『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(著:戸部良一ほか)

本書が書かれたのは終戦から約40年後の1984年ですが、今なお日本の企業は日本軍的な組織の特性を保ったままであると本書では指摘されています。そして本書が出版されてから35年が経った2019年現在においても、その性質は根本的には変わっていないといえるでしょう。日本軍を「日本企業」、環境を「現在の世界経済」に置き換えて本書を読めば、現代の企業にも共通する点が多いことに気付かされるはずです。

しかし、今、日本を取り巻く状況は大きく変化しようとしています。人口構造の変化、AIの台頭、世界経済の勢力図の変化と、環境の変化がこれまで以上に速く、大きくなっている現代で勝ち残るためには、変化にいち早く対応し、ルールを作る側にならなければなりません。

そのような状況の中で、日本の企業は、これまで受け継いできた日本的特徴を克服しなければ同じような失敗をしてしまうかもしれません。その意味で『失敗の本質』は多くの示唆を与えてくれます。日本軍の失敗から学び、同じ失敗を繰り返さないためにも、『失敗の本質』を読んでみてはいかがでしょうか。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究
  • 著 者戸部 良一、寺本 義也ほか
  • 出版社中央公論新社
  • 発売日1991/8/1

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