給与デジタル払い、企業にとってのメリット・デメリットは?

厚生労働省は、キャッシュレス化を推進するための施策として、給与デジタル払いを2021年度中にも解禁する予定としています。現在、銀行振り込みで給与支払いをしている企業が大半ですが、どれくらいの企業が給与デジタル払いに切り替えをおこなうのでしょうか。
当記事では、給与デジタル払いのメリット・デメリットについて詳しく解説します。給与デジタル払いに興味を抱いている方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

給与デジタル払いとは

給与デジタル払いとは、給与を銀行口座ではなく、電子マネーやQRコード決済の口座で受け取れる仕組みのことです。たとえば、SuicaやPASMO、PayPayやLINE Payなどで給与の受け取りができるようになるかもしれません。
この制度を、厚生労働省は「デジタルマネーによる賃金支払い」と呼んでいますが、一般的には「給与デジタル払い」と呼ばれることが多いです。

給与デジタル払い、企業の反応や検討は?

Works Human Intelligence社は、2021年2月、統合人事システム「COMPANY」を利用している企業247社の265名を対象に、給与デジタル払いに関するアンケート調査をおこないました。

調査結果では、給与デジタル払いを利用検討していて、利用予定の企業は、0.4%とかなり低い値を示しています。一方、利用検討しておらず、利用予定もない企業は、72.9%と非常に高い値を示しています。以上から、給与デジタル払いが解禁されてからも普及には時間がかかることが予想されます。

給与デジタル払いの利用を検討する場合の目的として、「銀行振込手数料の削減」が55.2%と最も高い値を示しています。
次いで回答が多かったのが、「従業員への便益」「ポイント付与による還元」で、従業員満足度を向上させたい企業も多いことが調査結果から読み取れます。

参考:【ワークスHI調査レポート】大手247法人意識調査 「給与デジタル払い」を検討(予定含む)している大手法人は約26%|COMPANY

給与デジタル払いの企業側のメリット

ここでは、給与デジタル払いを利用する企業側のメリットについて詳しく紹介します。

日払いなど多様な給与支払いのニーズに応えられる

給与デジタル払いを利用すれば、給与の支払回数や支払日を柔軟に変更することができ、従業員の給与支払いのさまざまなニーズに対応できるようになるかもしれません。
毎月、決まった日付に給料日を設定している企業がほとんどですが、給与デジタル払いを導入すれば、日払いなどもおこないやすくなります。

また、給与デジタル払いを導入すれば、銀行口座を持っていない人にも給与支払いができるようになります。さまざまな給与支払いのニーズに応えやすくなるため、多様な人材や働き方の促進にもつなげることができます。

振込手数料などのコスト削減につながる

給与デジタル払いを利用すれば、今まで銀行に支払っていた振込手数料が削減されるため、大幅なコスト削減を実現することができます。また、現金の管理コストは大きく、給与デジタル払いであれば、現金のやり取りを減らすことが可能です。

給与デジタル払いを利用することで、これらのコスト削減が可能になることは、企業側のメリットといえるでしょう。

外国人の採用が容易になり、雇用機会を逃さずに済む

現状では、企業に勤める際には社内規定に従い、銀行口座を開設するのが一般的です。しかし外国人にとっては、言語の違いや手続きの複雑さから、銀行口座を開設するハードルが高いという現状があります。そのため、企業側としても外国人採用の難しさが課題となっています。

今後はこれまで以上に少子高齢化が進んでいくなかで、外国人などの働き手を確保するのは、企業の採用において重要なことです。給与デジタル払いが利用できるようになれば、銀行口座を持っていない外国人でも給与を受け取ることが可能になるでしょう。その結果、企業側は外国人採用をスムーズにおこなえるようになり、雇用機会を逃さずに済むというメリットがあります。

従業員満足度の向上や求人応募の増加が期待できる

勤めている企業に給与デジタル払いが導入されれば、従業員は給与の支払い方法を選択できるようになるかもしれません。

また、給与の支払回数や支払日を従業員に合わせて柔軟に設定しやすくなることで、従業員満足度の向上につながるでしょう。結果として、福利厚生が充実化されることになり、企業への求人応募数の増加も期待できます。

給与デジタル払いの企業側のデメリット・懸念

ここでは、給与デジタル払いを利用する企業側のデメリットや懸念点について詳しく紹介します。

支払い方法の多様化で管理の手間が増える

現状の給与支払いに関する法律では、原則として現金の直接支給のみが認められています。一般化している銀行口座への給与振り込みは、法律上では例外として認められている状態となります。

給与デジタル払いの解禁によって、給与支払いの選択肢が増えるということになりますが、それと同時に給与支払いを担当する部署の業務が複雑化する可能性があります。

給与の支払方法が統一できない場合、給与支払いは、現金手渡し・銀行口座振込み・デジタル払いの3つの種類が混在することになります。たとえほかの支払い方法と比較してデジタル払いの業務負担は少ないとしても、複数の支払い方法が混在する場合、結果として事務担当者が負担する業務の量は増えることになります。

したがって、給与の支払い方法が多様化することは従業員にとっては大きなメリットではあるものの、企業や担当者にとっては、管理業務の増加というデメリットにつながることが考えられます。

不正引き出しなどのリスクが伴う

給与デジタル払いを導入すると、不正引き出しなどのサイバー攻撃のリスクが伴います。また、給与の支払いを確実なものとするために、本人確認をどのようにおこなうかも課題となっています。
実際に、PayPay社が提供しているスマートフォン決済サービス「PayPay」では、2020年12月、不正アクセスによってサーバー攻撃を受けました。その結果、およそ260万店舗の営業情報などが蓄積されているデータベースのうち、最大でおよそ2,000万件の情報流出の可能性があったと明示されています。

このような事例から、給与デジタル払いの導入によりセキュリティが脆弱になり、個人情報の流出や不正送金がおこなわれる可能性が危惧されています。

参考:PayPay不正アクセスで加盟店等の情報約260万件流出か、ブラジルからの攻撃|Cyber Security.com

資金移動業者が倒産した際の対応が不確定

給与デジタル払いを利用する上で懸念される点として、スマホ決済事業をおこなっている資金移動業者が倒産した場合の対応が不確定であることが挙げられます。

金融機関が経営破綻した場合には、預金保険制度(※1)によって利用者の預金が用者の預金は、保証されるようになっています。
一方、資金移動業者が倒産した場合には、どのようにして利用者の資金が保証されるのかが課題となっています。

現在、厚生労働省では、給与デジタル払いを問題なくおこなえるように制度設計をしています。(※2)
内容としては、厚生労働大臣によって指定された資金移動業者のみ、給与デジタル払いがおこなえるというものです。なお、指定条件の一つに、労働者に保証する仕組みを持つ業者であるとう項目も検討されています。
こちらの内容は変更の可能性もあるため、今後の政府動向を随時チェックしていきましょう。

※1:預金保険制度|金融庁
※2:第168回労働政策審議会労働条件分科会(資料)

給与デジタル払いはメリット・デメリットを見極めたうえで検討を!

いかがでしたか?給与デジタル払いを利用すれば、振込手数料の削減、多様な人材の確保、従業員満足度の向上などのメリットがあります。一方で、安全性の問題や管理の手間、資金移動業者の倒産リスクなどのデメリットもあります。

給与デジタル払いはまだ制度化がされていないため、政府の動向を随時確認し、自社に導入する必要があるかどうか検討していきましょう。

\フォローして最新情報を受け取ろう/

カテゴリから記事を探す

記事を絞りこむ

サイト制作・運営

RPA・アウトソーシング

セキュリティ・アクセス管理

ービジネスに役立つ情報を発信中ー