「生産性とは何か」マッキンゼー流仕事術がつまった一冊

本書は、世界的に有名なコンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニー社における、元採用マネージャーの伊賀泰代氏によって書かれています。いかに組織と人材の生産性を向上させるかを紹介されている一冊となっています。成果とは何か、自分はどのように働くべきなのか、を見つめ直すきっかけとなることでしょう。

マッキンゼー社の元採用マネージャー、伊賀泰代

一橋大学法学部を卒業後、日興証券社(現・SMBC日興証券社)に入社しました。
その後、カリフォルニア大学バークレー校にてMBAを取得し、帰国後は、マッキンゼー・アンド・カンパニー社にて17年間勤務し、2011年より独立しました。現在は、人材育成、組織運営に関わるコンサルティング業務で活躍しています。

本書のほかに『採用基準』などの著作があります。

元採用マネージャーである伊賀氏が生産性に注目した理由

伊賀氏は、日系企業と米国系企業の優秀な人材に求める資質の違いは、2つあると指摘しています。

1つ目はリーダーシップです。リーダーシップの意識の差は、チームのコストパフォーマンスに大きな差を生み出します。そして、2つ目が生産性です。日本では、「生産性を上げること=コストを削減」ということが先行されがちだと伊賀氏は言います。

私が今回、生産性について本を書こうと思ったのは、日本における(工場以外での)生産性に関する意識の低さが、世界と戦う日本企業にとって、大きな足かせになってると感じたからです。

引用:『生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(著:伊賀泰代)

日本でも「働き方改革」をはじめとし、民間レベルだけではなく、生産性向上の意識が高まっています。しかし、「働き方改革」という言葉の浸透だけでは全体的な生産性の向上には繋がりません。

軽視される「生産性」

本書の中では、新卒採用の現場に例えて、日本企業においていかに生産性が軽視されているのかを解説しています。

新卒採用の場合、人気企業になると、年間での応募者は数万人単位になります。ですが、その中には志望度の低い学生が一定数存在することは事実です。
実際に企業視点に立つと、応募者数は多ければ多いほど良いという判断もあるでしょう。これに対して伊賀氏は「量を追う発想が生産性を下げる」と指摘しています。日本企業において、生産性より目に見える数字の方が優先されてしまっている現状が浮き彫りになっています。

生産性を上げる2つの方法

生産性という言葉を耳にすることはよくあります。ですが、具体的な意味を問われると、その答えに迷ってしまう人も多いのではないのでしょうか。伊賀氏は、生産性をこのように解説しています。

生産性は「成果物」と、その成果物を獲得するために「投入された資源量」の比率として計算されます。
「アウトプット」÷「インプット」といってもよいでしょう。

引用:『生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(著:伊賀泰代)

つまり、少ない投資で大きな成果を得ることができれば、生産性は上がるということになります。「競争に勝ち抜いていくためには長時間働く必要がある」という従来の発想では、社員が疲弊して生産性が下がってしまいます。これでは、スピード感のある生産性重視型の企業との競争力の差は広がっていくばかりです。

これに対して、伊賀氏は、生産性を上げる方法として、「成果を上げる」「投入資源量を減らす」の2つを挙げて、4つのアプローチを提示しています。

量から質への評価へ

ビジネスパーソンの多くがその非効率さを実感しているのが、会議の時間ではないでしょうか。
海外からの皮肉じみたジョークには、「日本人は会議の開始時刻には厳密だが、終了時刻には極めてルーズだ。しかも誰もそのことを悪いとは思っていない。開始時刻にルーズなイタリア人と、終了時刻にルーズな日本人には何の違いもない」というものさえあるほどです。

引用:『生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(著:伊賀雅代)

このように、伊賀氏は、会議の時間の長さや終了時間の不明瞭さに問題を感じています。
この問題に対して、日本企業では会議の上限時間を決めたり、立ったまま会議をするなどの工夫が取り組みとして行われています。ですが、これらの方法は「会議の時間を短縮」することであって、会議の生産性を上げることではないと伊賀氏は指摘しています。
つまり、生産性を上げるためには、会議の時間を短縮することではなく、それぞれのコンテンツ内容の充実を図ることが重要であるということになります。

人材を諦めない組織へ

組織の構造がピラミッド型である限り、いつまでも全員に昇格や昇給の道が開かれているわけではありません。選抜に漏れた人をどう動機づけ、意欲の維持や成長を促していくかは、すべての組織にとってこれからますます重要な課題となります。

引用:『生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』(著:伊賀泰代)

どの組織にも、出世コースから外れる層は一定数存在します。当然ながら、彼らを放置したままでは生産性は見込めず、組織にとって痛手となってしまいます。
ですが、彼らの生産性を少しでも上げることができれば長期的な目で見ると利益となります。

ここで大切なのが、「選抜に漏れた人をどう動機づけ、意欲の維持や成長を促していくか」ということです。そのためには、フィードバッグが重要であると、伊賀氏は本書の中で説いています。

管理職の使命はチームの生産性向上

「管理職の仕事とは、チームの生産性向上のためにリーダーシップを発揮すること」であると伊賀氏は述べています。

チームの生産性は最重要事項になりますが、それと同じぐらい重要になってくるのが部下の育成です。部下が成長し、彼ら自身のタスクを100%こなすことができるようになれば、自然とチーム全体の生産性向上に繋がるというものです。
部下を育成しても当面の間はそれが成果にはなりません。しかし、長期的な目で見ると部下の仕事のパフォーマンスがチーム全体の生産性向上に繋がると伊賀氏は解説しています。

『生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの』を読んで

本書は、伊賀氏がマッキンゼー・アンド・カンパニー社で培った経験から、現代の日本企業の生産性の問題点について指摘しています。外資系企業、日系企業の企業風土の違いはありますが結局は「あらゆる場面において少しでも生産性を高めようとする強い意志」が大切であると感じる一冊です。

本書では、マッキンゼー流のメソッドが紹介されており、これらのすべて実践するということは決して容易ではないかも知れません。自社の社風に合わせて取り入れていくことが大切になるでしょう。

生産性 マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの
  • 著 者伊賀泰代
  • 出版社ダイヤモンド社
  • 発売日2016/11/25

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