「おとしどころの見つけ方」とは?相手と意見が衝突したときにうまく話をまとめるコツ

「議論が平行線のままで変わらない」「相手が自分の言ってることをわかってくれない」といった経験を、ほとんどの方が味わったことがあるのではないでしょうか。
この記事では交渉学・合意形成論の専門家である松浦正浩氏が書いた、「おとしどころの見つけ方」という本を紹介し、交渉においておとしどころを見つけるポイントを紹介します。

交渉とは

著者の松浦氏は、交渉とは「複数の人間が未来のことがらについて話し合い、協力して行動する取り決めをする」ことだといいます。
したがって、何も「刑事ドラマで見るような緊迫したやり取り」や「国家間の外交交渉」だけが交渉ではなく、恋人とのやり取りや上司にお願いをするときなど、さまざまな場面で私たちは交渉をしているようです。

そこで松浦氏は、多くの人が日々直面する交渉の場面においてうまく立ち回るために「話が通じない相手とどうやっておとしどころをつけるか」というテーマのもと、交渉学を学んでいるようです。
松浦氏はこの本で、私たちが交渉の場においてどうやっておとしどころをつけるか、押さえておくべきポイントを紹介しています。

ビジネスでの交渉①:交渉の心がまえ

第1章では、ビジネスにおける交渉とは何なのか、交渉の際に備えておくべき心がまえについて書かれています。
松浦氏は、「立場」と「利害」を把握したうえで交渉に臨むべきだといいます。

交渉学では、表面的な要求を「立場」、そして背後にある理由を「利害」と呼んで区別しています。
立場を受け入れる、受け入れないで水掛け論に終始するより、相手の利害を探って、その利害を満足させてあげることで、意外と簡単に問題が解決することもあるのです。

引用:『おとしどころの見つけ方』(著:松浦正浩)

この本で取り上げられている例を取り上げて紹介します。
この本の主人公、久地米太くん(「口下手」とかかっているのでしょう)は、有給休暇を取りたいと考えていますが、部長は許してくれません。

そこで、交渉の達人であるネゴ星人のアボットくんはこの立場と利害を整理して把握することで、交渉がうまくいくと述べています。
合わせて、アボットくんはさらに要求を重ねて通すテクニックや、交渉の際にしてはいけないことについても紹介しており、ビジネスにおける交渉の下地を支える考え方がこの章では学べるでしょう。

ビジネスでの交渉②:BATNAという考え方

久地くんは次に新たなシステムを導入してくれというミッションを社長から課されます。
その際、交渉力を身に着けるためにはBATNAという考え方を知るべきだとアボットくんに言われます。

交渉学のいちばん大事な考え方のひとつに、BATNA(バトナ)というものがあります。”Best Alternative to a Negotiated Agreement”の頭文字をとってBATNAというのですが、これは交渉が決裂したときの、自分にとってベストの代替案という意味です。

引用:『おとしどころの見つけ方』(著:松浦正浩)

このBATNAを意識して相手との交渉に臨むことで、交渉の際に相手の言いなりにならずに、自分の利害を満たすことができるようになる、と松浦氏は述べます。
相手に搾取されることなく、幅広い視野を持って解決策を探すことで、相手との交渉をうまく成功させるポイントがこのBATNAにあるようです。
この章では、BATNAという考え方をベースとして、久地くんがシステム会社とやり取りをし、社長の要求を満たすまでの道筋が描かれています。

ビジネスでの交渉③:多者間交渉のキホン

続いて、久地くんは新たなプロジェクトの取りまとめ役として任命されます。
この例を通じて、複数の交渉相手がいる場合にどのように交渉するべきかが書かれています。
このプロジェクトでは、さまざまな部署、役職の人が集まり、それぞれの人たちが自分の意見を言うだけで一向におとしどころが見つかる様子がありません。

また、第1章や第2章で学んだ考え方も、複数人相手ではうまく応用できません。そんななかで、複数人での交渉をうまく進めるためには、まず「全員の共通認識をつくるべきだ」とアボットくんはアドバイスします。

多数の関係者がいるプロジェクトをはじめるとき、それぞれの都合を最初に聞いてしまうと、みんな「火の粉が降ってくる」のをおそれてリスク回避をするため、ネガティブな意見ばかり出る傾向にあります。

(中略)

まず誰も否定できない「総論賛成」をつくることが重要です。そうすることで、問題の存在を関係者に認めさせ、問題解決に取り組む意欲を引き出しています。

引用:『おとしどころの見つけ方』(著:松浦正浩)

ただ、共通認識を形成しただけでは議論はうまく進みません。
複数人の話し合いを効率化させ、おとしどころを見つけやすくする方法を学び、久地くんがプロジェクトを進めていく姿がこの章では書かれています。

プライベートでの交渉①:すべての話し合いは交渉である

この章から、交渉の場はプライベートに移ります。
冒頭でも説明したように、交渉は何も堅苦しい場面だけで使われるものではなく、日々の恋人との会話や友人との会話の中にも多数みられるものである、と松浦さんは言います。

この章では久地くんは恋人の河合さんと一緒に旅行に行く予定を立てています。
河合さんは海外に行きたいのに対して、久地くんは国内でいいと考えており、2人は言い争いをしてしまいます。
しかしここでアボットくんは、第1章で学んだ「立場」と「利害」を改めてしっかり捉えるべきだ、とアドバイスします。

世の中のモメゴトの多くが、立場の食い違いから始まります。
それがエスカレートして感情的になり、交渉さえできないほど仲が悪くなってしまうこともあります。
ですから、交渉上手な人は、立場の争いになりそうなとき、はやい段階で「なぜ」を探り、利害に基づく問題解決へと移行させるのです。

引用:『おとしどころの見つけ方』(著:松浦正浩)

アボットくんのアドバイスを通じて、ビジネスの場面だけでなくプライベートの場面でも、交渉学の考え方を活かして恋人と円満な関係を築くコツがこの章では学べるのではないでしょうか。

プライベートでの交渉②:かけひきの正しい進め方

彼女との旅行を楽しんだ久地くん、今度は引っ越しをしようと考えているものの、どの引っ越し業者にお願いしようか決めかねています。
価格面、日程、サービス対応など、自分の満足いく条件で引っ越し業者にお願いしたい一方で、業者側もできる限り売り上げを上げるために自分の利害を通そうとしており、この利害の衝突に久地くんはイライラしてしまいます。
ここで松浦氏は、交渉とは何のことなのか、改めて立ち返ります。

交渉のいちばんの目的は、相手と自分の利害を満足させることです。
お互いにいろいろな都合がある中で、少しは妥協しつつ、自分のワガママも相手のワガママも実現できるようなおとしどころを見つけることです。

引用:『おとしどころの見つけ方』(著:松浦正浩)

交渉とはそもそも双方の利害をすり合わせることであり、この利害のズレは当然のことだといいます。
では、この利害のズレが起こることは当然だと理解したうえで、どのように立ち振る舞うべきなのでしょうか。

この章では、アボットくんのアドバイスを受けながら、久地くんが引っ越し業者とうまく交渉をする姿が描かれています。
また、この章からは久地くんは少しずつ交渉がうまくなってきており、成長している姿も垣間見えます。

プライベートでの交渉③:代表者同士の話し合い

最後は、久地くんが同窓会の幹事を務める場面での話です。
幹事を務める5人が集まってどういう同窓会にしようか会議をしますが、「1泊どこかに泊まって開催したい」、「居酒屋でやりたい」などと、それぞれが意見を出し対立するばかりで一向に話がまとまりそうにありません。

ただ、ここまでで交渉スキルを磨いた久地くんは、スマートに対応します。
この章では主に、ここまで学んだ知識を活かして、久地くんがうまく問題を解決する姿が描かれています。
ここまで学んだ内容を再度振り返り、どのように活かすべきかを学ぶことができる章です。

話をまとめるコツを身につけるなら交渉学を学ぶべき

松浦氏は最後にこう締めくくります。

ビジネスでもプライベートでも、自分と周りのみんなを幸せにできる「おとしどころ探し」の旅に、この本を携えて出かけてみませんか?

引用:『おとしどころの見つけ方』(著:松浦正浩)

取引先との会話、社内会議、恋人との会話など、さまざまな場面でお互いの利害が衝突する場面が多々あるでしょう。
ただ、そこで感情的になって相手を説き伏せようとしても意味がありません。

この本では、相手と自分の利害をうまく整理し、お互いが満足いく解を導き出すためのコツが書かれています。
相手と衝突することなく、うまく話をまとめるコツを学びたい方にとって、この本はまさに「おとしどころ」たるべき本となるでしょう。

おとしどころの見つけ方
  • 著 者松浦 正浩
  • 出版社クロスメディア・パブリッシング
  • 発売日2018/12/11

本書は、クロスメディア・パブリッシング社よりご恵贈いただきました。お礼申し上げます。

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