『THE MODEL』SaaS時代における科学的な営業プロセスとは?

2019年1月の発売以降、IT業界だけでなく多方面から注目を集めているビジネス書『THE MODEL(ザ・モデル)』。
THE MODELとは、セールスフォース・ドットコム社が導入している営業体制のことです。SaaSビジネスに最適化された「マーケティング」「インサイドセールス」「営業(フィールドセールス)」「カスタマーサクセス」の共業プロセスが詳細に解説されています。
これまで「営業」といわれてきた活動を見直すきっかけになるかもしれません。

SaaS時代のプレイブック『THE MODEL』

本書は、セールスフォース・ドットコム社が採用する営業プロセスマネジメントのメソッドが詳細に紹介されています。
セールスフォース・ドットコム社といえば、世界に先駆けてクラウドサービスを展開し、創業から20年足らずで1兆円以上の売上を生み出しています。セールスフォース・ドットコム社の成長には、「洗練された営業体制」と、それを支える仕組み「THE MODEL」があったといいます。

福田康隆氏とはどんな人物か

著者の福田氏は、米セールスフォース・ドットコム社で、洗練された営業の分業体制について学び、それを「THE MODEL」として日本に浸透させた人物です。

1996年、新卒で日本オラクル社に入社し、セールスコンサルタントとして勤務します。その後、米オラクル社へ出向することになり、アメリカでの「営業」に出会いました。
2004年、米セールスフォース・ドットコム社に転職し、「マーケティング」「インサイドセールス」「営業」「カスタマーサクセス」という共業プロセスを学びました。

日本よりも土地が広大なアメリカでは、「営業」において、訪問をせずに電話で営業をするインサイドセールスという営業手法の活用が進んでいました。顧客を一定の基準に照らし、基準以上の顧客に対して訪問営業をおこなうという方法がとられていたのです。

このような仕組み化されたアメリカでの「営業の分業体制」を日本の地理関係や商習慣に合わせて改良し、同社の日本法人に「THE MODEL」として導入しました。
その後、9年にわたり専務執行役員兼シニアバイスプレジデントとして同社の成長を支えました。

その後、マルケト社、代表取締役社長やアジア太平洋日本地域担当プレジデントを歴任し、2019年現在、アドビシステムズ社との統合に伴い、専務執行役員に就任しています。

アメリカで見た新しい営業スタイル

日本オラクル社に在籍中、アメリカ駐在員として日本企業の営業活動支援に携わっていた福田氏。
当時の上司からぽつりと、こう尋ねられたといいます。

「ヤス、なぜ日本人はあれほど細かく生産管理をやるのに、営業については何もしないんだ?」

引用:『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(著:福田康隆)

この問いかけから、アメリカと日本では「営業」に対する考え方・やり方に違いがあるのではないか、と感じた福田氏は本屋に向かいます。
アメリカの本屋には武勇伝を語るような本はなく、営業組織の作り方やテリトリーの考え方、報酬体系の構築など、学術的な書籍が並んでいたといいます。

これまで日本で見聞きしてきた営業とはレベルが違う。さっそく分厚い辞書のような洋書を5、6冊買い込み、読み漁ったのが本当の意味での「営業の出会い」となった。

引用:『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(著:福田康隆)

日本では、トップパフォーマーの方法論や精神論によって語られることが多かった「営業」という仕事に対して、アメリカでは学術的、科学的な理解が進んでいることに、福田氏は衝撃を受けました。この驚きがの後の「THE MODEL」へとつながっているようです。

THE MODELとは

縁があり、セールスフォース・ドットコム社に入社した福田氏は、のちに「THE MODEL」と名付けられる、営業の分業体制に出会います。

日本で「営業」といえば、ターゲットリストの作成から商談までのすべての工程を1人の担当者がおこないます。しかし、これでは仕事のリズムが乱れる上、それぞれのプロフェッショナルとして育たないという欠点があります。

一方、米セールスフォース・ドットコム社の「営業」は、分業体制で行われていました。「営業」という大きなくくりを「マーケティング」「インサイドセールス」「営業(フィールドセールス)」「カスタマーサクセス」の4つのプロセスに分けて構成されています。
1人ひとりがそれぞれの業務に集中することで仕事のリズムが整い、生産性が向上し、結果として業績が伸びることにつながります。

あくまでも数あるマーケティングと営業プロセスのパターンの1つに過ぎないものだった。現在、多くの人たちがこのモデルに注目し、活発に議論しているのを見ると、もはや1つのフレームワークになったように感じる。

引用:『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(著:福田康隆)

これ以降の章では、「THE MODEL」における各部門の役割や主要なKPIとその管理手法、チームの立ち上げ方、人材登用などが詳細に解説されています。
事業における顧客との接点をどのように構築してくべきか、自社でSaaSモデルの事業を展開していない場合でも、多くのヒントを得られるでしょう。

3つの基本戦略

この章では、事業を推進していくための基本的な戦略として、以下の3つが取り上げられてます。

  1. 市場戦略
  2. リソースマネジメント
  3. パフォーマンスマネジメント

ここでは、市場をどのように捉え事業の方向性を定めていくのか、その市場戦略に沿ってヒト・モノ・カネといったリソースを活用していくのか、事業のKPIをどのように見て割り振るかなどの戦略・マネジメントについて書かれています。

経営は「意思決定の連続」と言われる。では「意思決定」とは何かを考えると、それは「人、モノ、金」のリソースをどう分配するかに尽きる。

引用:『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(著:福田康隆)

特にリソースマネジメントでは、受注や売上をどのようにつくっていくべきか、販売計画に対して営業のキャパシティをどのように最大化するか、など営業チームの目標や人員配置をどのように考えるべきか示しています。

人材・組織・リーダーシップ

そして最後に、人と組織について紹介されています。

世の中には経営に関する理論やベストプラクティスがあふれているにもかかわらず、成功する会社とそうでない会社に分かれるのは、その「実行」で差がつくからだ。

引用:『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(著:福田康隆)

マネジメントをするうえで、大局的に見ることを意識するあまり、細かい日常のことを現場に任せてしまうことがあります。しかし、リーダーこそ細かいことにも深く関与し、理解し、「実行」するということを組織全体に浸透させることが重要である、と書かれています。

また、ここでは自身が組織づくりにおいて意識していることを踏まえ、リーダーやマネジメントにおけるメンタリティにも触れられています。

新時代のSaaSビジネス

いかがでしたか。
モノを持たず、レンタルやシェアをするサービスが主流となっている現代では、SaaSビジネスが広く展開されていくでしょう。また、テクノロジーの発展が著しい現代では、マーケティング部門が担う範囲が広がり、その重要性が増していきます。それは、従来のように、1人の営業担当がすべての工程をカバーすることが、難しい時代になってきているともいえます。
これからは、顧客の購買行動や心理状態に合わせて、「マーケティング」「インサイドセールス」「営業」「カスタマーサクセス」など、機能的な組織体制を目指していくべきなのかもしれません。

『THE MODEL』を読めば、「営業」に対する新たな認識や共業体制の構築に向けたヒントが得られるでしょう。
この機会にSaaS時代のプレイブック『THE MODEL』を読んでみてはいかがでしょうか。

THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス
  • 著 者福田 康隆
  • 出版社翔泳社
  • 発売日2019/1/30

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