メンター制度とは?助成金を受けられる新しい人事制度を徹底解説

労働人口の減少により、企業の人材確保は厳しい状況が続いています。また採用ができても入社後、会社に馴染めずに離職してしまう社員も多くいるのではないでしょうか。
このような課題への対策として、メンター制度という人事制度があります。
今回は、メンター制度の目的やメリット、注意点、導入のための流れなど詳しく紹介します。

更新日:2020.1.29

メンター制度とは

メンター制度とは
©Roman Samborskyi – shutterstock

メンターとは、人生における助言者や指導者、師という意味があります。
メンターは、悩みを抱える者に対して、ロールモデルになるように自らの生き方や成功体験を伝えます。そして相手が、自分で問題解決できるような能力を身につけれるように支援や指導をします。
このような指導のことをメンタリングと呼びます。また、指導される側をメンティと呼びます。
社会人になると必ずメンターを持たなければならないということではありませんが、メンターからのメンタリングは、メンティの成長に大きくつながります。

通常、これまでの人生で関わってきた恩師や先輩、上司などから、メンターを見つけことが多いです。しかし、これまで出会ってきた人たちの中にメンターになりうる人がいない、悩んだときに相談する相手がいないという人も多く存在しています。
本来は、自らの人脈においてメンターを探し、メンタリングを受けるものなので、誰かに強制されるものではありません。しかしながら、企業内においては、悩みを持ちながらも相談相手がいないという若手社員を中心に、制度として人材育成をおこなっていくという動きが広がっています。これを「メンター制度」といいます。

メンターとメンティの関係

メンター制度では、メンターとメンティが存在します。
メンティは指導対象となる社員のことを指し、会社の環境に慣れていない新入社員や若手社員の場合が多いです。ほかにも女性社員、中堅社員、役職者がメンティになる場合もあります。
また、メンターとメンティの関係は、メンティ自身の悩みを打ち明けやすいという観点から、業務上直接関わる人ではない斜めの関係の人が良いとされています。

メンター制度の目的

メンター制度の最終的な目的は、社員の定着による離職率の低下です。
誰にも相談できない環境で、前触れもなく社員がやめてしまったということを経験をした方もいるのではないでしょうか。
その社員の悩みにもう少し早く気付いていれば、退職はしていなかったかもしれない事案もあるかもしれません。このような状況にならないよう、メンター制度を用いてこまめなフォローをおこない、メンティの気持ちの変化を察知してすぐにフォローできるような体制構築があると良いでしょう。

また、人材育成という目的でも、メンター制度を活用することができます。
この目的の場合、今後の成長を期待しているメンバーに対して、一世代上の活躍している社員や、ロールモデルとなる社員をメンターにすることが多いです。

日常において上司との会話は、業務の進め方や目標の達成に向けた取り組みなど、実務の内容になりがちです。そこで、メンターが、仕事への向き合い方やキャリアップの方法、メンティの上司が期待していることなどを伝えます。つまりメンターは、優れた人格やメンタリティの形成だけでなく、上司との橋渡し役になることもあるのです。

このようにメンター制度を活用して、組織的にメンバーの育成を促進させることができます。

類似する制度と違い

新入社員を教育する人事制度は、メンター制度以外にもさまざまなものがあります。
ここでは、メンター制度と似た人事制度を紹介します。

項目 メンター制度 OJT ブラザー・シスター制度

指導役になる人

直接の上司ではない斜めの先輩社員

直接の上司

歳の近い先輩社員

指導される人

新入社員・中堅社員など

新入社員

新入社員

制度の内容

直接業務で関わらない先輩が後輩の悩みを聞き出し、メンティを導く

業務のなかで直接指導を受け、知識やノウハウを落とし込む

歳の近い先輩社員が相談役となり、不安や心配事を聞き出してアドバイスする

主な目的

離職率の低下
人材育成

新入社員の即戦力化

離職率の低下
双方の育成

OJT

OJTとは、実務を通じて業務を教える教育制度のことです。英語では「On the Job Training」と表します。
OJTは実際の業務を通じて知識やノウハウを学べる教育制度であるため、直接の上司に当たる人から教育を受けることになります。

新人に対して設けられる制度であるという点でメンター制度やブラザー・シスター制度と近しいですが、OJT制度は実務能力を早く身に付け、新入社員を即戦力化することを目的としています。

ブラザー・シスター制度

ブラザー・シスター制度とは、歳や年次の近い先輩社員が新入社員の不安・悩みを聞き出し、アドバイスをする教育制度のことです。
最近まで学生だった新入社員にとって、歳の離れた上司と働くことはそれ相応の変化が伴うことです。そんななか、歳の近い先輩社員に悩みを打ち明けることができれば、ストレスの解消につながり、ひいては離職率の低下にもつながります。

また、ブラザー・シスター制度は指導役に回る先輩社員にとっても学習する機会になります。ブラザー・シスター制度で初めて後輩の指導に当たることになる先輩社員もいるため、後輩へのアドバイスの仕方を学ぶことができます。

メンター制度で助成金が受けられる

メンター制度で助成金が受けられる
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企業の人事制度の改善や生産性向上などの取り組みによって従業員の職場定着の促進を図るために、厚生労働省は人材確保等支援助成金を支給しています。メンター制度も対象の1つで、適切な運用をおこない、従業員の離職率を低下させることができたら、目標達成助成として57万円(生産性要件を満たした場合は72万円)が支給されます。
詳しくは、厚生労働省の「人材確保等支援助成金」を参照してください。

参考:人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース、介護福祉機器助成コース、介護・保育労働者雇用管理制度助成コース)|厚生労働省

【年次別】人材育成における課題

【年次別】人材育成における課題
©fizkes – shutterstock

企業を拡大するうえで、人材育成は必要不可欠です。しかし、人材育成といっても、年次によって抱えやすい課題はさまざまです。
抱えている課題によって、取るべきアプローチは異なります。ここでは、従業員が抱えやすい課題を年次別に紹介します。

入社直後の課題

入社して間もない新入社員は、学生から社会人への環境変化によって悩むことが多いでしょう。
学生から社会人に変わるということは、ただ環境が変化するだけでなく、サービスを「消費する側」から「提供する側」に変わるということでもあります。サービスを提供する側に回るということは、自分自身が負う責任が増えるということでもあります。この責任の重さ、プレッシャーの大きさに対して悩みを抱えている新入社員は多くいることでしょう。

また、学生時代に思い描いていた社会人生活と現実の落差に悩むこともあるでしょう。
就職活動をしているとき、学生は企業の良い側面だけを見ることが多いです。そのなかで、キラキラ働けるイメージを持って社会人生活をスタートさせる人もいるでしょう。そのようなキラキラしたイメージとは裏腹に、現実に待っている地味な仕事の連続に辟易してしまうというのも、新入社員が抱えやすい課題といえます。

2~3年目の課題

2~3年目の若手社員は、思うような成長実感を得られないという悩みを抱えることが多いでしょう。
会社での業務に慣れてきてルーティンワーク化してしまいがちな2~3年目の社員にとって、成長実感を得る機会は1年目のときと比べて少なくなってしまいます。こうした課題を抱えたまま業務に取り組んでいると、モチベーションの低下につながります。

モチベーションの低下を防ぐためには、定期的に成長実感を得られるような振り返りをおこなう仕組みをつくると良いでしょう。

3年目以降の課題

3年目以降の社員は、自身の職能が成長したことにより、キャリアアップを考えることが増える時期になります。
会社に入社して年次が上がるにつれ、社内で学べることが少ないと感じるようになり、他社に移ってキャリアを築いていきたいと考えることもあるでしょう。しかし企業としては、社内で育成していった人材が他社に転職してしまうことは防ぎたいですよね。
このような場合、本人が「できている」と思っていることを直接の上司ではない斜めの関係から指摘してあげることで、転職を考えている従業員がまだ社内で成長する余地があることを伝えることができます。また、この機会に別の役割を与えることで、新しいスキルを身に付ける手助けをするのも良いでしょう。
こうした支援をするうえで、斜めの関係からアプローチするメンター制度は効果を発揮するでしょう。

メンター制度の4つのメリット

メンター制度の4つのメリット
©Pressmaster – shutterstock

メンター制度を導入することで多方面にメリットが生まれます。
ここでは、4つのメリットを紹介します。

メリット①:メンティの不安解消

入社したばかりのメンティは慣れない業務や知らない人とのコミュニケーションなどで不安な日々が続きます。そのなかで、悩みを相談できる相手がいることは精神的な支えとなり、自分と世代が近いメンターが実績を積んでることはメンティのモチベーション向上につながります。

メリット②:社内コミュニケーションの活性化

多くのメンターはメンティとは異なる部署に所属している場合が多いです。そのため普段関わることのない人同士の関係性が築かれ、社内コミュニケーションの活性化につながります。
社内に活気が出ることで、社員たちのモチベーションが上がり、いつも以上の成果が出せるかもしれません。

メリット③:女性社員のキャリア形成支援

女性社員のキャリア形成を促進させるために、これから成長していく女性社員に対してキャリアを持った女性がメンターになる場合があります。結婚、出産、産休、育児などを控え、今後の働き方について不安を抱えている女性社員が多く存在しています。
そのような社員たちのロールモデルとなるメンターを配置することで、将来のビジョンやキャリアがイメージしやすくなります。
その結果、就業継続への意欲も高まり、女性社員が積極的にキャリア形成できる環境を用意することができるでしょう。

メリット④:メンターのマネジメントに対する意識向上

メンターになった社員は、マネジメントへの責任感が生まれます。またメンティとコミュニケーションをとることで、相手に教える難しさに気付いたり、自身のキャリア形成を振り返ったりすることになります。
このように、メンター制度はメンター側にも成長を促す効果があると考えられています。

メンター制度を導入する際の注意点

メンター制度を導入する際の注意点
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ここでは、メンター制度の導入を成功させるために、2つの注意点を紹介します。
せっかく導入したメンター制度が、形だけの制度になってしまわないよう、しっかりと押さえておきましょう。

注意点①:メンターの業務負担が増える

メンターは通常業務に加えて、メンティへのフォローをおこなわなければなりません。
自分の業務が忙しく、メンティとの面談との時間が作れなかったり、メンターがいつも忙しそうでメンティが声をかけづらい状態になったりしてしまうと、メンター制度の効果は薄れてしまう可能性があります。
メンター本人には決められた時間内で計画的に業務をおこなう能力が求められますが、合わせて社内全体でメンター制度への理解を深め、サポートできるような体制を作りましょう。

注意点②:メンターによってサポート度合いが異なる

メンターの経験や能力によって、メンティへのサポート度合いにばらつきが生じることがあります。
メンティが、「自分とぺアになっているメンターは周りのペアに比べてコミュニケーションの機会が少ない」「メンターからのアドバイス内容が適切ではなくあまり相談したくない」などの不満を抱かせないよう、メンターに対しては指導方法をレクチャーしておく必要があります。

メンター制度を導入するまでの流れ

メンター制度を導入するまでの流れ
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メンター制度を導入をするためにはどのようなことが必要なのでしょうか。
ここでは、メンター制度の導入ステップを紹介します。

メンター制度の目的・ルール設定

メンター制度の導入にあたって、経営者や人事部など制度を運営者で集まり、メンター制度の目的の認識をすり合わせます。そして目的に合った運用ができるようルール決めをおこないます。
ここで認識がずれてしまうと、人によって実施するメンターやメンティへの指示や指導がずれてしまい、現場が混乱してしまう可能性があるので注意しましょう。

メンター制度に関するマニュアル

メンター制度の内容は、それぞれの企業が自社にあった内容を考える必要があります。
初めてメンター制度を導入するという場合は、厚生労働省のホームページにはメンター制度のマニュアルが公開されているので、それを参考にまずは考えてみるという手も有効でしょう。

参考:女性社員の活躍を推進するための「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」|厚生労働省

メンターを選定

一般的にメンター制度は運営側がメンターになる人を選び、依頼をします。今までの実績や経験、人間性などから公平に判断をし、適切なメンターを選びます。
メンター制度において、メンターはとても重要なポジションであるため、日頃から人事部側は社員の情報収集やヒアリングをしておきましょう。

メンターとメンティのマッチング

一般的にマッチングは人事部側でおこなわれます。メンターとメンティの個性を見極めたうえでマッチングするようにしましょう。
また、メンターとメンティは相談しやすい関係性が必要なため、お互いの年齢が近く、業務で直接関わらないような関係が好ましいとされています。

メンター制度の社内周知とメンターの事前研修

まずメンター制度を導入することを社内全体にアナウンスしましょう。メンターは通常業務に加えてメンティの指導の役割を担わなければならないため、社内全体にメンター制度の内容を理解してもらい、周りのサポートが十分な環境を作ります。
また、メンターへはメンター制度の目的の意義や指導方針を共有する事前研修の場を設けましょう。

定期的な面談・フォローを実施

メンターとメンティは定期的に面談をおこない、メンティが日々抱える不安や悩みを解決していきます。基本的な面談の内容に関しては当人たちが主体になりますが、任せっぱなしにならないよう、人事部側からも定期的にフォローを入れましょう。
また、面談の環境はメンティがリラックスして話ができるような環境作りを心掛けることも大切です。

メンター制度期間終了後の振り返り

メンター制度期間が終わった後は、人事側からメンターとメンティにヒアリングやアンケートを実施します。メンター制度の実施を通して、両者にどのような変化や成長があったのか把握し、結果からPDCAを回して、次回からのメンター制度実施に活用しましょう。

メンター制度を導入する際のポイント

メンター制度を導入する際のポイント
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メンター制度を導入するまでの流れを確認したところで、導入するときに意識しておきたいポイントも押さえておきましょう。ここでは、そのポイントを紹介します。

メンターとメンティの信頼関係の構築

メンターとメンティの間で信頼関係がなくなると、メンティは自己開示をしなくなってしまいます。
そのうえ、メンターもメンティのことがわからず、適切なフォローがおこなえなくなってしまいます。これではメンター制度の意味がありません。
したがって、メンター制度では信頼関係の構築が最優先になります。メンターはメンティの聞き役となり、人間性においてもメンティの期待を裏切らないような行動を常に心掛けるよう、事前の研修にで落とし込んでおきましょう。

メンター制度の意義を浸透させる

メンターとメンティ間の会話の内容は基本的にはお互いしか把握することができません。
メンター制度の目的やメンティの理想像をメンターの共通認識にして、メンター自身の性格や考え方にメンティが影響を受けすぎないよう、フォローを入れるようにメンターを指導しておきましょう。

メンターの貢献度を人事評価に反映させる

メンター制度を上手く活用するためには、メンターの貢献度を人事評価に含めるという方法があります。

メンターはほかの社員同様、通常業務を抱えたうえでメンティの指導にあたることになります。
会社組織では、優秀な人に業務が集中するということが、往々にして起こります。そのような優秀な社員に長く定着してもらうためにも、彼らの活躍に報いる人事評価制度であると良いでしょう。

手当・賞与などの金銭的報酬を提供することもあれば、表彰などの意味報酬にするという方法もあります。また、メンターとして何人の後輩を育成したということを昇格基準にするという人事制度も考えられるでしょう。

自社のメンター制度の目的に合わせ、メンターの人事評価を検討してみてください。

メンターに向いている人

メンターに向いている人
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それでは、メンターに向いている人とはどのような人なのでしょうか。ここでは、メンターに向いている人の特徴を紹介します。

聞き役に徹することができる人

まず、メンターとして最も大切なことは、メンティの話に耳を傾けて聞き役に徹することです。
メンター制度では業務の悩みや職場の人間関係の悩みなど、センシティブな悩みを聞き出すため、メンターとメンティの関係構築が大切になります。信頼関係を構築するためには、メンティの話を否定せずに聴いてあげる必要があります。

メンターには、相手の話を遮らずに耳を傾けられる人を割り当てると良いでしょう。

同じ目線で対話することができる人

メンターには、同じ目線で対話することができる人が向いているといえます。
メンター制度は斜めの先輩がメンティを務めるものですが、メンティからすれば職場の先輩であることに変わりはありません。
メンティの緊張をほぐすには、同じ目線で対話することが求められます。同じ目線で対話することで、メンティはメンターに対して親近感を持ち、悩みを打ち明けてくれるよになります。

そのためメンターには、メンティと同じ目線に立って対話することができる人を割り当てると良いでしょう。

メンター制度は、離職を減らし、社内を活気づかせる

いかがでしたか。
メンター制度は社内環境を整え、離職を抑えることができます。さらに社員の育成もでき、優秀な人材が育てば、社内の活性化にもつながります。
せっかく導入したメンター制度が形骸化した制度にならないよう、上記で紹介した注意点をしっかり押さえてメンター制度を有効に活用しましょう。

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