フェルミ推定とは?2つの例題でやり方を詳しく解説|おすすめの本5選も

ビジネスパーソンにとって論理的思考力は欠かすことができないスキルの1つです。
論理的思考力があれば、意見を主張する際に説得力が増したり、何かしらの問題が生じた時に道筋立てて問題解決の方法を考えたりすることができるようになります。
そんな論理的な思考力を養うための手法として最適なのが「フェルミ推定」です。
今回は、フェルミ推定についてその解き方や例題を詳しく解説していきます。

フェルミ推定とは?

フェルミ推定とは?
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フェルミ推定とは、直感的に答えを導くことが難しい問題について手元にある知識と情報から仮説とロジックを組み立て、短時間で答えを出すことを指します。
今回は、フェルミ推定をおこなう目的やその解き方について紹介していきます。

フェルミ推定の目的

フェルミ推定の目的
©ESB Professional – shutterstock

フェルミ推定は思考力を養うツールとして役に立ちます。
フェルミ推定で問題を解くためには、論理的思考力、仮説的思考力、課題抽出能力、全体を俯瞰して考える力、定量化などの能力が必要となってきます。
そのため、フェルミ推定を解くためのトレーニングを積み重ねることで広い思考力を身につけることができます

また、欲しい情報がないという状況でも今ある情報を上手く組み合わせることによって、現状の最適解を出すことができます。
そのため、何かの企画をする前段階の仮説を立てたり、おおよそのマーケットサイズを掴んだりするなどといった実務の現場でも活用することができます

フェルミ推定のやり方

フェルミ推定のやり方
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ここではフェルミ推定を実際に解く方法を紹介します。フェルミ推定は大きく5つの手順で解くことができます。

フェルミ推定のやり方①:条件を明らかにする

まずは、求める問題の条件について確認し、定義付けをする必要があります
例えば、「ペットボトル飲料の売上高を求めよ」という問題があったとします。
このとき、一括りにペットボトル飲料といっても、容量が350ml、500ml、1L、2L などさまざまな種類があり、どこまでのペットボトル飲料を数えるのかによって、その後の計算や結果が変わってきます。
そのため、まずは数える対象ついて定義付けをする必要があります。

また、抽象的な問題ほど数える対象の範囲を決める必要があります
例えば、ペットボトル飲料の消費の場面はさまざまです。個人で消費をしたり、家庭で消費したり、企業のイベントで消費したり、さまざまなパターンが考えられます。
さらに、消費される地域の範囲を考えると、東京で消費されるペットボトル飲料や日本で消費されるペットボトル飲料、世界で消費されるペットボトル飲料と、どこまでを推計の範囲とするかによって結果は変わります。

加えて、消費される時間の範囲を考えると、1カ月の消費量と1年間の消費量などで異なります。
フェルミ推定は問題によって条件が限定されることもありますが、条件を指定されていない場合には自分で条件を限定しておくと解きやすくなります。
特に、場所や時間の範囲については最初に決めておくと良いでしょう。

フェルミ推定のやり方②:解までのアプローチ方法を考える

次に、最終的な数値を導くための根幹となる式を決めます
例えば、「日本人が1年間に消費する500mlのペットボトル飲料の売上高」を求める場合、次のように因数分解をしてアプローチする方法が考えられます。
ここでは、1年は52週間と考えて以下のように式を立てることができます。

日本人が1年間に消費する500mlのペットボトル飲料の売上高
=日本人が1週間に消費する500mlのペットボトル飲料の売上高×52週

しかし、日本人が1週間に消費する500mlのペットボトルの売上高をいきなり出すのは難しいでしょう。
そこで、日本人が1週間に消費する500mlのペットボトル飲料の売上高をさらに以下のように分解して考えることができます。

日本人が1週間に消費する500mlのペットボトル飲料の売上高
=日本人1人が1週間に消費する500mlのペットボトル飲料の本数×日本の人口×ペットボトル飲料の価格

最終的に、日本人が1年間に消費する500mlのペットボトル飲料の売上高を求める式は以下のように分解することができます。

日本人が1年間に消費する500mlのペットボトル飲料の売上高
=(日本人1人が1週間に消費する500mlのペットボトル飲料の本数×日本の人口×ペットボトル飲料の価格)×52週

このようにフェルミ推定では、知識や情報として手元にある数値、もしくは感覚的に予測できそうな数値に当てはめられるまで細分化して式を作ります。

フェルミ推定のやり方③:アプローチ方法をさらに場合分けする

基本的な式を決めたら、次は条件に応じた場合分けをします
というのも、年齢、場所などの条件によって1週間に消費するペットボトル飲料の量は変わるからです。
先程立てた「日本人が1年間に消費する500mlのペットボトル飲料の売上高=(日本人1人が1週間に消費する500mlのペットボトル飲料の本数×日本の人口×ペットボトル飲料の価格) ×52週」という式の中の、「日本人1人が1週間に消費する500mlのペットボトル飲料の本数」は性別や年齢によってそれぞれ異なることが予測されます

例えば、500mlのペットボトル飲料は直感的に頻繁に外出する人がよく利用すると考えられます。
そのため、500mlのペットボトル飲料は20代の男性のほうが70代女性よりも多いと予測を立てることができます。
このように、「日本人1人が1週間に消費する500mlのペットボトル飲料の本数×日本の人口」の部分は、さらに年齢・性別にもとづいた場合分けによって式を分解することができます。

フェルミ推定のやり方④:数値を当てはめて計算する

ここまで、最終的な数値を導くための式を立ててきました。
次は、細分化してきた式に実際に数値を当てはめて計算をします
フェルミ推定では、短時間でおおよその数値を求めることが大切なので、細かい数値に関しては概数を用いて計算します。

例えば、日本人1人が1週間に消費するペットボトル飲料の量を年齢・性別ごとに数値を決めてみます。
手元に情報や知識がない状況で数値を決める場合は、優先順位ごとに分けて考えると良いでしょう
具体的には、61~80歳の年齢層よりも21~40歳の年齢層のほうが500mlを利用する頻度が多い傾向にあると優先順位付けをした時は、61~80歳の年齢層よりも21~40歳の年齢層のペットボトル飲料の消費量を多く設定します。
数値が決まったら、以下のような表にしてまとめると良いでしょう。

日本人1人が1週間に消費するペットボトル飲料の量
年齢 0~20歳 21~40歳 41~60歳 61~80歳 81歳以上

4本

7本

6本

4本

2本

3本

6本

6本

4本

1本

フェルミ推定のやり方⑤:検証する

最後に、結果の検証をします
計算によって数値を導くことができたら、実際の数値と求めた数値がどれくらい乖離しているかを確認します。
乖離が大きいほど、仮定やロジックで合理的でない部分があったことになります。

また、実際の数値データがない場合はロジックを見直して矛盾点がないか洗い出します。
検証して振り返ることで思考が足りていなかった部分を把握できるようになります。

フェルミ推定の例題①:日本にある電柱の数

フェルミ推定の例題①:日本にある電柱の数
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ここまでフェルミ推定のやり方について紹介してきました。
ここからは実際に例題を使ってどのようにフェルミ推定を解くのかを紹介します。
まずは、「日本にある電柱の数」をフェルミ推定で求めてみましょう。

フェルミ推定のやり方①:条件を明らかにする

まずは、ここで数える電柱の条件を決めましょう
ここで、電柱は日本国土に立っている電線や通信ケーブルを支えるために活用されているもののみを考えるものとします。
製造過程の電柱やまだ利用されていない電柱は除外します。

フェルミ推定のやり方②:解までのアプローチ方法を考える

次に、電柱の本数を求めるための式を立てます
電柱は日本国土に立っているものを求めるので、ここでは面積あたりの電柱の数をベースにして考えます。
そのため、以下のような式を立てることができるでしょう。

日本にある電柱の数=日本の面積×1km2あたりの電柱の数

フェルミ推定のやり方③:モデルの分解をする

次に、電柱の設置状況は場所によって異なると考えられるので場合分けしてみましょう
日本の国土は、人が住んでいる可住地面積と人が住んでいない自然面積で分けることができ、自然面積にはほとんど電柱がないと考えられます。
また、可住地面積でも都会と田舎では電柱の数に差があることが直感的にわかります。
そのため、上で決めた式は条件によって以下のように分解することができます。

日本にある電柱の数
=日本の面積×日本における都会の割合×都会における1km2あたりの電柱の数)
+(日本の面積×日本における田舎の割合×田舎における1km2あたりの電柱の数)
+(日本の面積×日本における自然面積の割合×自然面積における1km2あたりの電柱の数)

フェルミ推定のやり方④:数値を当てはめて計算する

次に、上の式に適切な数値を入れていきます
まず、日本の面積は約38万km2です。そして、可住地面積と自然面積の比率はそれぞれ3:7とします。
また、可住地面積のうち都会と田舎の面積の比率を1:1とします。

次に電柱については、都会には平均して40mおきに1本、田舎には平均して100mおきに1本立っていて、自然面積には電柱が立っていないと仮定します。
そうすると、都会には1km2あたりに電柱が625本、田舎には1km2あたりに電柱が100本あることになります。
これを先程の式に当てはめて計算してみます。

日本にある電柱の数
=(38万×15%×625)+(38万×15%×25)+(38万×70%×0)
=3,705万本

日本にある電柱は3,705万本であると求められました。

フェルミ推定のやり方⑤:検証する

国土交通省の統計によると、2016年時点で日本の電柱は3,578万本(※1)だというデータがあります。
今回フェルミ推定で導き出した3,705万本は実際の3,578万本と大幅な乖離がないので、ある程度現実的な数値を求めることができたと考えられます

※1:電柱本数の推移 – 国土交通省

フェルミ推定の例題②:日本で1年間に消費された割り箸の本数

フェルミ推定の例題②:日本で1年間に消費された割り箸の本数
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次に、「日本人が1年間に消費する割り箸の本数」を考えてみましょう。

フェルミ推定のやり方①:条件を明らかにする

まずはじめに、フェルミ推定をする割り箸について条件を決めましょう
ここにおいて、割り箸は日本人が食事をする際に使用する割り箸と定義します。
工作や掃除など、食事以外の利用目的で消費される割り箸はカウントしないものとします。

フェルミ推定のやり方②:解までのアプローチ方法を考える

次に、1年間の割り箸の使用本数を求めるための式を立てます
割り箸は個人によって消費されるので、人口を利用することで解くことができそうです。
ここでは、人口をベースにして以下のような式を立てます。

日本人が1年間に消費した割り箸の本数
=1人の日本人が1年間に消費した割り箸の本数×日本の人口

ここで、「1人の日本人が1年間に消費した割り箸の本数」については、知識や情報として手元にある場合が少なく、感覚的に予測するのは難しそうなのでさらに分解して考えます。

1人の日本人が1年間に消費した割り箸の本数
=1人の日本が1週間に消費した割り箸の本数×52週

「1人の日本が1週間に消費した割り箸の本数」であれば、おおよそを直感的な予測を立てることができるでしょう。

日本人が1年間に消費した割り箸の本数
=1人の日本人が1週間に消費した割り箸の本数×52週×日本の人口

フェルミ推定のやり方③:モデルの分解をする

次に、1人あたりの1週間の割り箸の消費量は、外食をするか家でご飯を食べるかなどを考慮すると、年齢によって異なると考えられるので、年齢ごとに場合分けをしてみましょう
日本の人口を年齢別に0~20歳、21~40歳、41~60歳、61~80歳、81歳以上の5つに分けて先程立てた式を分解します。

日本で1年間に消費された割り箸の本数
=(0~20歳の日本人1人が1週間に消費した割り箸の本数×52週×0~20歳の人数)
+(21~40歳の日本人1人が1週間に消費した割り箸の本数×52週×21~40歳の人数)
+(41~60歳の日本人1人が1週間に消費した割り箸の本数×52週×41~60歳の人数)
+(61~80歳の日本人1人が1週間に消費した割り箸の本数×52週×61~80歳の人数)
+(81歳以上の日本人1人が1週間に消費した割り箸の本数×81歳以上の人数)

フェルミ推定のやり方④:数値を当てはめて計算する

次に、数値を当てはめて計算をしていきましょう。
まず、日本の総人口はおよそ1億3,000万人です。
そして、年齢層ごとの人口は以下表のように分布していると考えます。

年齢層 0~20歳 21~40歳 41~60歳 61~80歳 81歳以上

人口比率

10%

20%

20%

5%

5%

人口

1,300万人

3,900万人

3,900万人

2,600万人

1,300万人

次に、年齢別に1週間ごとの割り箸の利用頻度を考えますが、直感的に数値を決めるのが難しい場合は優先順位をつけると良いでしょう
具体的には、外食をする機会が多いと割り箸の利用頻度も多くなると考えることができるので、年齢ごとの外食の利用頻度を順序付けてみます。
まず、最も外食の利用頻度が少ないのは外出の機会が減っていく81歳以上であると考えられます。

また、81歳以上の次に外食の頻度が少ないのは、家庭や給食で食事をすることが多い0~20歳であると考えることができます。
反対に、21~40歳の人たちは、外食が最も多くなることが考えられるので割り箸の利用頻度が最も多くなるのではないかと予測します。
41~60歳は家庭を持つようになり、21~40歳よりも外食が減るのではないかと考えます。

さらに、61~80歳は41~60歳よりも外出頻度は減りますが、0~21歳よりも外食の機会は多くなると仮定できます。
以上のように実感をもとにした推察から、割り箸の使用頻度は「21~40歳>41~60歳>61~80歳>0~20歳>81歳以上」となるのではないかと予測します。
これをもとに以下のように1週間の割り箸の利用本数を考えてあてはめていきます。

年齢層 0~20歳 21~40歳 41~60歳 61~80歳 81歳以上

1週間の利用本数

2本

5本

4本

3本

1本

以上の情報をもとに数値計算をします。

日本人が1年間に消費した割り箸の本数
=(2×52×1,300万)+(5×52×3,900万)+(4×52×3,900万) +(3×52×2,600万)+(1×52×1,300万)
≒243億本

よって1年間の割り箸の消費量はおよそ243億本であることが予測されました。

フェルミ推定のやり方⑤:検証する

割り箸は年間でおおよそ178~190億本消費されるというデータがあります。
今回推計された243億本との乖離は27.9~36.5%と少し大きい誤差が生じたので、仮説や数値設定に問題があったのではないかと考えられます
今回は、1人あたりの割り箸の利用数を多く見積もったことが原因だと考えられます。

フェルミ推定の練習に役立つ本5選

フェルミ推定の練習に役立つ本5選
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フェルミ推定は、思考力を鍛えるためのツールとして最適です
練習を繰り返すほど論理的な思考力が向上し、導き出される数値の精度も上がります。
ここでは、そんなフェルミ推定を中心とした論理的思考力について、より詳しく学びたい方やトレーニングをしたいという方におすすめの本を5つ厳選して紹介します。

『現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート―「6パターン・5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける! 』

フェルミ推定の問題を1,000問以上解いてきた東大生たちによって導き出されたフェルミ推定のノウハウが書かれた1冊です。
フェルミ推定の問題のパターンや解き方のステップが体系化されているのでフェルミ推定の手法を学ぶのに最適です。
例題も豊富で解き方のステップに沿った解説がされているので、フェルミ推定が初心者の方でも実践的に学びたい方におすすめです。

現役東大生が書いた 地頭を鍛えるフェルミ推定ノート―「6パターン・5ステップ」でどんな難問もスラスラ解ける!
  • 著 者東大ケーススタディ研究会
  • 出版社東洋経済新報社
  • 発売日2009/9/18

『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』

問題解決力が必要とされるコンサルティング業界で重要視される地頭力。
そんな地頭力とは何か、なぜ地頭力が必要なのかということについて、地頭力を鍛えるためのフェルミ推定と紐づけて解説した本です。
また、フェルミ推定だけでなく問題解決に必要な仮説思考力、フレームワーク思考力、抽象化思考力に関しても紹介されています。
フェルミ推定を中心に地頭力を鍛えたい方に最適な本です。

地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」
  • 著 者細谷 功
  • 出版社東洋経済新報社
  • 発売日2007/12/7

『サイエンス脳のための フェルミ推定力養成ドリル』

フェルミ推定に関する例題が集められた1冊です。
問題は、日常的なものからエネルギー、化学、天体、環境などのサイエンス分野まで幅広いテーマが取り扱われています。
少し複雑なフェルミ推定に挑戦してみたい方やサイエンスの知識や考え方も身につけたいという方におすすめの本です。

サイエンス脳のための フェルミ推定力養成ドリル
  • 著 者ローレンス・ワインシュタイン、ジョン・A・アダム
  • 出版社日経BP
  • 発売日2008/10/23

戦略コンサルティング・ファームの面接試験―難関突破のための傾向と対策

コンサルティングファームへの就職や転職の際の面接対策として書かれた本です。
フェルミ推定はもちろん、それ以外でコンサルタントに必要な論理的思考について実際の面接での議論を交えながら紹介されています。
プロのコンサルタントの戦略的思考を身につけることができる1冊です。

戦略コンサルティング・ファームの面接試験―難関突破のための傾向と対策
  • 著 者マーク・コゼンティーノ
  • 出版社ダイヤモンド社
  • 発売日2008/9/20

『世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく』

発行部数が47万部を突破し、世界25カ国以上で翻訳出版されている問題解決に関するベストセラーです。
フェルミ推定の本ではありませんが、ロジカルシンキングの基本や問題解決における考え方の基本を学ぶことができる本です。
わかりやすい図解や共感しやすいストーリー仕立てで内容が展開されるので、論理的思考を学ぶためのはじめの1冊としておすすめです。

世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく
  • 著 者渡辺 健介
  • 出版社ダイヤモンド社
  • 発売日2007/6/28

フェルミ推定で論理的思考力を磨こう!

限られた情報で思考力のみを駆使して答えを導くフェルミ推定は、論理的思考力を鍛えるために最適なツールです。
また、フェルミ推定は訓練を繰り返すほど思考力と精度が増し、物事の大枠を理解する際や仮説思考をする際に役立てることができるようになります。
論理的思考力を養いたいという方はフェルミ推定に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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