フレックスタイム制とは?働き方改革で変わる就業規則などを徹底解説

2019年4月から施行された働き方改革関連法のなかに、フレックスタイム制の見直しが取り入れられています。見直しされたフレックスタイム制を導入することで、従業員の働き方にどのような効果がもたらされるのでしょうか。この記事ではフレックスタイム制の基本的な内容と働き方改革関連法による改正部分を紹介します。

更新日:2020.1.29

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは?働き方改革で残業や精算期間がどう変わるのか詳しく解説
トルテオ編集部

フレックスタイム制とは、出勤時間と退勤時間が定められていない働き方の1つです。
企業ごとに一定期間での総労働時間の規定を設け、その時間内で従業員自身が働く時間を決めることができます。従業員の生活リズムや個々の仕事のスタイルに合った働き方をすることで組織の業務効率向上につながり、労働時間の短縮も見込まれるとされています。

フレックスタイム制には多くの場合、コアタイムとフレキシブルタイムが設けられています。それぞれ解説していきます。

コアタイムとは

コアタイムとは、勤務が義務付けられている時間のことです。コアタイムに指定されている時間は従業員は勤務する義務が発生するため、どの時間帯に設定するかが重要になります。

例えば、コアタイムを午前8時から午前12時とした場合、フレックスタイム制を設定していても従業員は朝早くから出社しなければならず、朝に子どもの送り迎えがあるという社従業員の要望に応えることができません。午前10時から午後3時に設定しておけば、朝に用事がある従業員は遅めに出勤することができ、逆に夜に用事がある従業員は早く来て仕事を終わらせるということもできます。

フレキシブルタイムとは

フレキシブルタイムとは、出勤や退勤が自由な時間帯ことを指します。
フレキシブルタイムは出勤・退勤が自由なため、この時間内で個人の都合に合わせて勤務時間を調整することができます。

フレックスタイム制と残業の関係

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固定時間制の場合は、1日の労働時間が8時間を超えたり、1週間の労働時間が40時間を超えたりすると残業代が発生します。しかし、フレックスタイム制の場合は一定期間当たりの法定労働時間は定められているものの、1日単位での法定労働時間は定められていないので、固定時間制と同じルールでは残業代を算出することができません。

「フレックスタイム制だから、残業代を払う必要はない」と思っている方もいるかもしれませんが、フレックスタイム制においても残業代の支払いは必要です。
残業の有無は定められた清算期間における総労働時間を超えているかどうかで判断します。
ここでは、総労働時間を超えた場合と総労働時間に満たない場合の対応について解説します。

総労働時間が超過した場合

この場合は、清算期間に対する総労働時間を超過した分を、残業代として支払う必要があります。ただし、残業代の算出方法は法定労働時間内で総労働時間が超えた場合と法定労働時間を超えた場合で計算方法が異なるため注意が必要です。

詳しい算出方法は、厚生労働省が公表している「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」をご確認ください。

総労働時間が不足した場合

総労働時間が不足してしまった場合は、翌月に繰越をして不足分を調整することができます。ただし法定労働時間内での調整に限ります。そのため総労働時間と法定労働時間が等しいと翌月への繰越はできません。
よって、繰越ができるパターンは、清算期間における総労働時間が法定労働時間よりも少なく、翌月の実働(※1)が法定労働時間を越えていないときになります。
したがって、もともと総労働時間と法定労働時間が同じだったり、次月に法定労働時間内で調整ができなかったりする場合の不足分は賃金の減額になります。給与に関しては、労働トラブルになりやすい事案なので特に注意しましょう。

※1:実働
実際に働いた時間のこと。休憩時間を除いた勤務時間を指す。

フレックスタイム制のメリット

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ここでは、フレックスタイム制を導入するメリットを紹介します。
従業員にも企業にもさまざまなメリットがあり、うまく活用することで従業員の満足度を上げることができるのではないでしょうか。

私生活に合わせた働き方を提供できる

企業はフレックスタイム制を導入することで、従業員の私生活と仕事のバランスを保ちながら働く環境を提供することができます。
例えば、子どもの送迎をする共働きの夫婦。
フレックスタイム制で働いていれば、送りと迎えを分担することができます。送りをするときは朝遅めに出勤をし夜も遅めに退勤をする、逆に、迎えを担当するときは朝早めに出勤をし、夜も早めの退勤をするということができるようになります。
そのほか、家族の介護と両立して働く社員など、仕事もプライベートもどちらも優先しながら就業できる働きやすさがメリットといえるでしょう。

業務効率が上がる

フレックスタイム制は、従業員が自分のコンディションや業務量に応じて働く時間を決めることができるので、業務が忙しい時期は集中的に仕事に取り組むことができます。逆に仕事が落ち着いているときは自分の仕事が終われば退勤できるため、自分のために時間を使うことができます。
その時間を自己啓発や疲労回復などそれぞれのリフレッシュに充てることで、翌日から一層業務に励むことができるのでないでしょうか。

不要な残業を削減できる

フレックスタイム制を導入している企業では、ほとんどの企業でコアタイムが設定されており、その時間以外においては出退勤が自由です。
また、労働時間の制限が1日単位ではないため1日8時間の規定を超えても残業にあたらず、1カ月単位で調整することができます。そのため、「前日長時間働いたので今日は早く帰宅しよう!」などその時の状況に応じて効率よく業務ができ、不要な残業を抑えることができます。

フレックスタイム制のデメリット

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ここではフレックスタイム制のデメリットについて紹介します。
業務効率向上など従業員にも企業にも価値があるとされる制度ですが、デメリットもしっかり把握したうえで導入を検討しましょう。

自己管理ができないと仕事が滞る可能性がある

フレックスタイム制の場合、コアタイムとして働かなければならない時間が短いため、業務の進捗管理はある程度従業員に任せることになります。
仕事の内容に関しては、納期が決められているものもあるため従業員それぞれが計画を立て、進捗管理をおこなうことがとても重要です。
また、フレックスタイム制では上司の目から離れる時間が多くなるため、怠けようと思えばそうすることもできる環境でもあります。フレックスタイムを導入する場合、制度を構築するだけでなく、自己管理を徹底するように促すことも必要です。

社内コミュニケーションがとりにくい

コアタイム以外は従業員がばらばらに出退勤するため、社内で人が揃う機会が少なくなります。また、全体の会議などはコアタイムの時間でおこえるよう調整が必要です。
個人の生活に合わせた働き方ができる一方で、チームとして団結感をつくるには、通常の勤務形態とは違った工夫を凝らす必要があります。

残業時間の把握が難しい

一般的な働き方(固定時間制、※2)では、1日8時間、週40時間(法定労働時間、※3)を超える勤務の場合、残業代を支払うことになっています。一方、フレックスタイム制は従業員の就業しなければならない時間を定める期間(清算期間、※後述)内の総労働時間の過不足で残業代を計算します。そのため日割りの数字としては見えづらいという難点があります。

「フレックスタイム制を導入すれば、勤怠管理をしなくてもいい」「時間を気にせず働かせてもいい」と考えてしまう人も少なくはありません。しかし、企業は、従業員の勤務状況を正しく把握し、過重労働の解消や適切な賃金支払をおこなうことが求められます。
そのため、フレックスタイム制であっても、ほかの労働時間制と同等に注意を払い、管理していく必要があります。

※2:固定時間制
労働時間制度の1つで、広く一般的に知られている働き方。法定労働時間を原則とし、企業ごとに就業規則によって始業時間・終業時間・休憩時間が定められている。これを超過した場合、時間外労働にあたる。

※3:法定労働時間
労働基準法によって定められた労働時間の限度。原則として1日8時間、1週40時間とされており、これを超えた労働は、時間外労働にあたる。

フレックスタイム制と職種の関係

フレックスタイム制と職種の関係
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フレックスタイム制は従業員の私生活に合わせた柔軟な働き方を提供することができますが、すべての職種で活用できるというわけではありません。
例えば、エンジニアやデザイナーなど、個人作業が多い職種においては有効活用できるでしょう。一方、営業職は顧客の都合に合わせなければいけなかったり、管理部門は会社の従業員の都合に合わせなければいけなかったり、自由な時間で働くことが難しい側面があります。
フレックスタイム制を導入する際は、職種との相性も踏まえて検討すると良いでしょう。

厚生労働省が進める働き方改革で変わる内容

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2019年4月から順次施行になった働き方改革関連法ですが、そこでフレックスタイム制の内容も見直されています。ここでは、変更点と注意点を紹介します。

清算期間の上限が1カ月から3カ月へ

今まではフレックスタイム制に伴う清算期間の上限は1カ月でしたが、2019年4月から上限3カ月に変更になりました。そのため清算期間を2カ月単位や3カ月単位で設定できるようになります。ただし、清算期間が1カ月を超える場合は所轄労働基準監督署長へ労使協定の届出が必要になるため注意が必要です。

残業の発生基準が変更に

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清算期間が1カ月以上になった場合、残業の発生基準が変わります。

たとえば清算期間が3カ月の場合は、3カ月間の中で総労働時間の過不足を調整します。これにより、今までよりも労働時間の調整がしやすくなりました。しかし、下記2点のどちらかに該当した場合は時間外労働になり、法定の割増賃金を残業代として支払う必要があるので注意が必要です。

  • 清算期間全体で実働時間が週平均40時間以上
  • 単月の実働時間が週平均50時間以上

1つ目に関しては今回の法改正で新たに設けられたルールです。単月の週所定労働時間に上限が設定されました。上記のどちらかにでも該当すると時間外労働の発生になります。

働き方改革関連法によってもたらされるメリット

働き方改革関連法によってもたらされるメリット
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フレックスタイム制が見直されることで、従業員・企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは2つ紹介します。

清算期間が延びたことで働き方の柔軟さがより増す

清算期間の上限が3カ月になったことで、働き方がより柔軟になりました。
たとえば、子どもがいるお母さんがフレックスタイム制で働いている場合で考えてみましょう。6月から8月の3カ月が清算期間だったときに6、7月の就業時間を少し長めにとれば、子どもの夏休みに合わせて8月の就業時間を短くすることができます。
このように清算期間の延長は、子どもや自分のスケジュール、業界の繁忙期・閑散期に合わせて就業時間の調整がさらにしやすくなり、より柔軟な働き方ができると考えられています。

単月の週所定労働時間の制限は過重労働の抑止になる

上記では清算期間が長いと繁忙期や閑散期に合わせて働くことができ、より柔軟な働き方ができると伝えました。しかし、清算期間が長くなると月によって就業時間が特定の時期に偏りすぎてしまうことがあり、その期間は長時間労働や過重労働となる危険性もあります。
そのため、単月の週所定労働時間が50時間以上になった場合は時間外労働とみなされ、就業時間の偏りを防ぎ、長時間労働を是正することができるようになりました。

フレックスタイム制を導入するまでの流れ

フレックスタイム制を導入するまでの流れ
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フレックス制を導入するためには、以下の2点を満たす必要があります。

  • 就業規則に規定する
  • 労使間で協定を締結する

ステップ①:就業規則に規定する

就業規則とは、企業それぞれが労働基準法に沿って作成する社内の約束のことです。
常時10人以上の従業員を雇用している企業は所轄の労働基準監督署長に届出が必要とされています。そのなかにフレックスタイム制を導入する旨の記載が必要です。

ステップ②:労使間で協定を締結する

労使協定とは、労働者対使用者で交わす約束事を書面で記した協定のことです。ここで指す労働者とは、労働組合または労働者の過半数を代表する者のことです。
フレックスタイム制を導入するためには以下の項目を就業規則に定め、労使協定を結ばなければなりません。

対象の労働者の範囲

フレックスタイム制が適用される対象を指定します。対象となる範囲の分け方は、企業内の全労働者、一部の部署の従業員のみ、グループごと、個人ごと、など自由に決めることができます。

清算期間を決める

清算期間とは従業員が就業しなければならない時間を定める期間のことです。
もともと清算期間の上限は1カ月でしたが、2019年4月から施行された働き方改革関連法により、上限が3カ月に変更になりました。

清算期間における起算日を決める

清算期間を決める際に、どの日付を起算日とおいて計算するのか決める必要があります。

清算期間における総労働時間を決める

これは、清算期間における所定労働時間のことを指します。
1日8時間、週40時間を基本にしてフレックスタイム制における清算期間内の総労働時間を決定します。ただし、週の平均労働時間を法定労働時間の範囲におさめる必要があります。
清算期間における総労働時間はこのような式で求められます。

清算期間における総労働時間=精算期間の暦日数÷7日×1週間の法定労働時間

1日の労働時間の長さを決める

標準となる1日の労働時間は、清算期間内の総労働時間を該当期間の所定労働日数(※4)で割った時間のことです。有給休暇を取得した際は、1日の労働時間としてこちらが適用されます。

※4:所定労働日数
期間内における、従業員が働くべき日数のこと。

コアタイムとフレキシブルタイムを決める

フレックスタイム制を導入する場合、コアタイムとフレキシブルタイムの時間を設定することがあります。設定するコアタイムの長さは企業側に委ねられてますが、コアタイムが1日の労働時間のほとんどを占め、フレキシブルタイムが短時間の場合はフレックスタイム制として認められないこともあるので気を付けましょう。
またコアタイムの設定自体は、必須ではないため企業によってはコアタイムがないところもあります。

フレックスタイム制の導入を成功させるには

いかがでしたか。
働き方改革によって、従来よりもさらに従業員が自由に働くことができる環境を提供できるようになりました。その反面、導入の際に企業側が押さえなければいけない注意点も増えたという側面もあります。したがって、いかに正しい情報を理解して運用することができるかが重要です。
従来の制度内容の把握と改定箇所との兼ね合いで生じるメリット・デメリットを検証したうえでうまく活用すれば、就業環境の向上につながるのではないでしょうか。
また、少子高齢化で働く層が減るなか、働き方に多様性を持たせることは自社の魅力の1つになるかもしれません。

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