フレックスタイム制とは?働き方改革で残業や精算期間がどう変わるのか詳しく解説

2019年4月から施行された働き方改革関連法の中にフレックスタイム制の見直しが取り入れられています。見直しされたフレックスタイム制を導入することは、従業員の働き方にどのような効果をもたらすのでしょうか。この記事ではフレックスタイム制の基本的な内容と働き方改革関連法による改正部分を紹介をします。

フレックスタイム制とは?

従業員自身が仕事と私生活のバランスを考えながら働くことを目的にフレックスタイム制がつくられました。ここでは、フレックスタイム制度の詳細や制定の背景を紹介します。

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、出勤時間と退勤時間が定められていない働き方の1つです。
企業ごとに一定期間に対して総労働時間の規定を設け、その時間内で従業員自身が働く時間を決めることができます。従業員の生活リズムや個々の仕事のスタイルに合った働き方をすることで組織の業務効率向上につながり、労働時間の短縮も見込まれるとされています。

コアタイム・フレキシブルタイム

フレックスタイム制には多くの場合、コアタイムとフレキシブルタイムが設けられています。
コアタイムとは勤務が義務付けられている時間で、フレキシブルタイムとは出社や退勤が自由な時間です。

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トルテオ編集部

フレックスタイム制の歴史と現状

1987年の労働基準法改正を受けて、1988年にフレックスタイム制が正式に導入されました。
従業員のワークライフバランスを図りながら、効率的に働くことができるようにすることを目的とし、大手企業を筆頭にフレックスタイム制は普及をしていきます。当時はバブル絶頂期で働き方の自由が重視されるようになっていた時代背景が普及の要因になっていたのかもしれません。

しかし2000年代に入るとフレックスタイム制を導入している企業が徐々に減少しています。
内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 平成28年版」の調べによると、従業員1,000人以上の企業において、1996年時点でフレックスタイム制を導入している企業は40%に迫っていましたが、2015年時点では21.7%に減っていることがわかります。
制度内容は、従業員の働き方に優しいはずなのに、なかなか定着しない理由はどこにあるのでしょうか。あらためて、メリット・デメリットを確認しましょう。

フレックスタイム制のメリット

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ここではフレックスタイム制のメリットについて紹介します。
従業員にも企業にもさまざまなメリットがあり、うまく活用することで従業員の満足度を上げることができるのではないでしょうか。

ワークライフバランスに合わせた働き方を提供できる

企業はフレックスタイム制を導入することで、従業員のライフの変化に伴い、個人の事情と仕事のバランスを保ちながら働く環境を提供することができます。
たとえば、子どもの送迎をしないといけない共働きの夫婦を考えてみてください。フレックスタイム制で働いていれば、送りと迎えを分担することができます。送りをするときは朝遅めに出勤をし夜も遅めに退勤をする、逆に、迎えを担当するときは朝早めに出勤をし、夜も早めの退勤をするということが可能になります。
そのほか、家族の介護と両立して働く社員など仕事もプライベートもどちらも優先しながら就業できる働きやすさがメリットといえるでしょう。

業務効率が上がる

フレックスタイム制は、従業員が自分のコンディションや業務量に応じて働く時間を決めることができるので、業務が忙しい時期は集中的に仕事に取り組むことができます。逆に仕事が落ち着いているときは自分の仕事が終われば退勤できるため、自分のために時間を使うことができます。その時間を自己啓発や疲労回復などそれぞれのリフレッシュに充てることで、翌日から一層業務に励むことができるのでないでしょうか。

不要な残業を削減できる

フレックスタイム制を導入している企業では、ほとんどの企業でコアタイムが設定されており、その時間以外においては出退勤が自由です。
また労働時間の制限が1日単位ではないため1日8時間の規定を超えても残業にあたらず、1カ月単位で調整が可能です。そのため「前日長時間働いたので今日は早く帰宅しよう!」などその時の状況に応じて効率よく業務ができ、不要な残業を抑えることができます。

フレックスタイム制のデメリット

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ここではフレックスタイム制のデメリットについて紹介します。
業務効率向上など従業員にも企業にも価値があるとされる制度ですが、デメリットもしっかり把握したうえで導入を検討しましょう。

自己管理ができないと仕事が滞る可能性がある

フレックスタイム制の場合、コアタイムとして働かなければならない時間が短いため、業務の進捗管理はある程度従業員に任せることになります。
仕事の内容に関しては、納期が決められているものもあるため従業員それぞれが計画を立て、進捗管理をおこなうことがとても重要です。
また、自己管理ができない社員が存在してしまっている場合は、その会社の人事的な問題点でもあります。従業員の採用や配属の段階で、自己管理能力が高い人なのか見極めをしっかりおこなうことが企業側に求められます。

社内コミュニケーションがとりにくい

コアタイム以外は従業員がばらばらに出退勤するため、社内で人が揃う機会が少ない傾向があります。また全体の会議などはコアタイムの時間でおこえるよう調整が必要です。
個人の生活に合わせた働き方ができる一方で、チームとしては団結しづらい環境にあるといえるでしょう。

残業時間の把握が難しい

一般的な働き方(固定時間制、※1)では、1日8時間、週40時間(法定労働時間、※2)を超える勤務の場合、残業代を支払うことになっています。しかし、フレックスタイム制は、従業員の就業しなければならない時間を定める期間(清算期間、※後述)内の総労働時間の過不足で残業代を計算します。そのため日割りの数字としては見えづらいという難点があります。

「フレックスタイム制を導入すれば、勤怠管理をしなくてもいい」「時間を気にせず働かせてもいい」と考えてしまう人も少なくはありません。しかし、企業は、従業員の勤務状況を正しく把握し、過重労働の解消や適切な賃金支払をおこなうことが求められます。そのため、フレックスタイム制であっても、ほかの労働時間制と同等に注意を払い、管理していく必要があるのです。

※1:固定時間制
労働時間制度の1つで、広く一般的に知られている働き方。法定労働時間を原則とし、企業ごとに就業規則によって始業時間・終業時間・休憩時間が定められている。これを超過した場合、時間外労働にあたる。

※2:法定労働時間
労働基準法によって定められた労働時間の限度。原則として1日8時間、1週40時間とされており、これを超えた労働は、時間外労働にあたる。

フレックスタイム制を導入するために

フレックス制を導入するためには、以下の2点を満たす必要があります。
1点目は「就業規則に規定する」、2点目は「労使間で協定を締結する」です。それぞれ説明していきましょう。

就業規則に規定する

就業規則とは、企業それぞれが労働基準法に沿って作成する社内の約束のことです。常時10人以上の従業員を雇用している企業は所轄の労働基準監督署長に届出が必要とされています。
その内容にフレックスタイム制を導入する旨の記載が必要です。

労使間で協定を締結する

労使協定とは、労働者対使用者で交わす約束事を書面で記した協定のことです。ここで指す労働者とは、労働組合または労働者の過半数を代表する者のことです。
フレックスタイム制を導入するためには以下の項目を就業規則に定め、労使協定を結ばなければなりません。

対象の労働者の範囲

フレックスタイム制が適用される対象を指定します。対象となる範囲の分け方は、企業内の全労働者、一部の部署の従業員のみ、グループごと、個人ごと、など自由に決めることができます。

清算期間の長さ

清算期間とは従業員が就業しなければならない時間を定める期間のことです。
もともと清算期間の上限は1カ月でしたが、2019年4月から施行された働き方改革関連法により、上限が3カ月に変更になりました。

清算期間における起算日

清算期間を決める際に、どの日付を起算日とおいて計算するのか決める必要があります。

清算期間における総労働時間

これは、清算期間における所定労働時間のことを指します。
1日8時間、週40時間を基本にしてフレックスタイム制における清算期間内の総労働時間を決定します。ただし、週の平均労働時間を法定労働時間の範囲におさめる必要があります。
清算期間における総労働時間はこのような式で求められます。

清算期間における総労働時間=精算期間の暦日数÷7日×1週間の法定労働時間

1日の労働時間の長さ

標準となる1日の労働時間は、清算期間内の総労働時間を、該当期間の所定労働日数(※3)で割った時間のことです。有給休暇を取得した際は、1日の労働時間としてこちらが適用されます。

※3:所定労働日数
期間内における、従業員が働くべき日数のこと。

コアタイムとフレキシブルタイム

フレックスタイム制を導入する場合、コアタイムとフレキシブルタイムの時間を設定することがあります。設定するコアタイムの長さは、企業側に委ねられてますが、コアタイムが1日の労働時間のほとんどを占め、フレキシブルタイムが短時間の場合はフレックスタイム制として認められないこともあるので気を付けましょう。
またコアタイムの設定自体は、必須ではないため企業によってはコアタイムがないところもあります。

フレックスタイム制と残業の関係

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固定時間制の場合は、1日の労働時間が8時間を超えたり、1週間の労働時間が40時間を超えたりすると残業代が発生します。しかしフレックスタイム制の場合は1日の所定労働時間が決まっていないので固定時間制と同じルールでは算出ができません。
ここでは、フレックスタイム制の残業について詳しく紹介します。

フレックスタイム制でも残業代の支払いは必要

「フレックスタイム制だから、残業代を払う必要はない」と思っている方もいるでしょう。この認識は誤りで、フレックスタイム制においても残業代の支払いは必要です。
ただし残業の有無は定められた清算期間における総労働時間を超えているかどうかで判断します。

総労働時間が超過した場合

この場合は、清算期間に対する総労働時間を超過した分を、残業代として支払う必要があります。ただし、残業代の算出方法は法定労働時間内で総労働時間が超えた場合と法定労働時間を超えた場合で計算方法が異なるため注意してください。

総労働時間が不足した場合

総労働時間が不足してしまった場合は、翌月に繰越をして不足分を調整することができます。ただし法定労働時間内での調整に限ります。
そのため総労働時間と法定労働時間が等しいと翌月への繰越は不可です。
よって繰越ができるパターンは、清算期間における総労働時間が法定労働時間よりも少なく、翌月の実働(※4)が法定労働時間を越えていないときになります。
したがって、もともと総労働時間と法定労働時間が同じだったり、次月に法定労働時間内で調整ができなかったりする場合の不足分は賃金の減額になります。給与に関しては、労働トラブルになりやすい事案なので特に注意しましょう。

※4:実働
実際に働いた時間のこと。休憩時間を除いた勤務時間を指す。

働き方改革で見直される内容とは?

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2019年4月から順次施行になった働き方改革関連法ですが、そこでフレックスタイム制の内容も見直されています。ここでは、変更点と注意点を紹介します。

清算期間の上限が1カ月から3カ月へ

今まではフレックスタイム制に伴う清算期間の上限は1カ月でしたが、2019年4月から上限3カ月に変更になりました。そのため清算期間を2カ月単位や3カ月単位で設定できるようになります。ただし清算期間が1カ月を超える場合は所轄労働基準監督署長へ労使協定の届出が必要になるため注意が必要です。

残業の発生基準が変更に

清算期間が1カ月以上になった場合、残業の発生基準が変わります。

たとえば清算期間が3カ月の場合は、3カ月間の中で総労働時間の過不足を調整します。これにより今までよりも労働時間の調整がしやすくなりました。しかし下記2点のどちらかに該当した場合は時間外労働になり、法定の割増賃金を残業代として支払う必要があるので注意が必要です。

  1. 清算期間全体で実働時間が週平均40時間以上
  2. 単月の実働時間が週平均50時間以上

①に関しては今回の法改正で新たに設けられたルールです。単月の週所定労働時間に上限が設定されました。①と②のどちらかにでも該当すると時間外労働の発生になります。

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法改正後のメリット

フレックスタイム制が見直されることで、従業員・企業にとってどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは2つ紹介します。

清算期間が延びたことで働き方の柔軟さがさらに増す

清算期間の上限が3カ月になったことで、働き方がより柔軟になりました。
たとえば、子どもがいるお母さんがフレックスタイム制で働いている場合で考えてみましょう。6月から8月の3カ月が清算期間だったときに6、7月の就業時間を少し長めにとれば、子どもの夏休みに合わせて8月の就業時間を短くすることができます。
このように清算期間の延長は、子どもや自分のスケジュール、業界の繁忙期・閑散期に合わせて就業時間の調整がさらにしやすくなり、より柔軟な働き方ができると考えられています。

単月の週所定労働時間の制限は過重労働の抑止になる

上記では清算期間が長いと繁忙期や閑散期に合わせて働くことができ、より柔軟な働き方ができると伝えました。しかし清算期間が長くなると月によって就業時間が特定の時期に偏りすぎてしまうことがあり、その期間は長時間労働や過重労働となる危険性もあります。
そのため単月の週所定労働時間が50時間以上になった場合は時間外労働とみなされ、就業時間の偏りを防ぎ、長時間労働を是正することができるようになりました。

法改正後のデメリット

一方で、今回の法改正によるデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

導入手続き・勤怠管理の複雑化

法改正により導入に必要な工程が複雑になっています。また勤怠管理も清算期間に応じて規定内容が異なるため、人事の負担は大きくなるかもしれません。

フレックスタイム制の導入を成功させるには

いかがでしたか。
働き方改革によって、従来よりもさらに従業員が自由に働くことができる環境を提供できるようになりました。その反面、導入の際に企業側が押さえなければいけない注意点も増えたことも事実です。したがって、いかに正しい情報を理解して運用することができるかが重要です。従来の制度内容の把握と改定箇所との兼ね合いで生じるメリット・デメリットを検証したうえでうまく活用すれば、就業環境の向上につながるのではないでしょうか。
また少子高齢化で働く層が減るなか、働き方に多様性を持たせることは自社の魅力の1つになるかもしれません。

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